大和出版印刷株式会社

奪取

2013-01-30

01営業部の三宅です。今回は『奪取』(真保裕一、講談社、1996)から紹介しましょう。贋札作りをめぐるコン・ゲーム小説です。四六判二段組五百ページを超える大冊ですが、多くの描写を印刷物の製造過程にあてていて、今回久しぶりに読み返しましたがなかなか楽しかったです。やはりこの手の話のキモは「この本のとおりにすれば自分にも日本銀行券が作れるんじゃないか」と読者に思わせられるかどうかで、冷静に考えると実際は当然無理ですけれども、少なくとも印刷業のことはわかったような気になるという意味で成功していると思います(現在は講談社文庫)。

02贋札に興味がわいた方には『贋札の世界史』(植村峻、日本放送出版協会、2004)を。著者はもと大蔵省印刷局勤務で、「日本の贋札史」「世界の贋札史」「戦争と紙幣偽造」の三章立てでコンパクトにまとめています。上記『奪取』の一部が1993年の実際の事件を参考にしていることなどもわかります。戦時における「伝単」や「軍票」のエピソードが個人的には面白かった。軍票の話といえば松本清張の短編『西郷札』なんてのもありました。

04戦争と紙幣偽造といえば、『ヒトラーの贋札』(2007)という映画がありました。ナチ対囚人の贋札造りをめぐる攻防!、と聞いて『特攻大作戦』や『ロンゲスト・ヤード』、はたまた『勝利への脱出』みたいなドラマを期待したら全然違う地味な映画でした。史実に基づいたお話ですが、原作は『ヒトラーの贋札 悪魔の工房』(A・ブルガー、朝日新聞社、2008)で体験者の手記がベースです。より客観的な「ベルンハルト作戦」の全体像は『ヒトラー・マネー』(L・マルキン、講談社、2008)をどうぞ。

05現代が舞台の『ウルトラ・ダラー』(手嶋龍一、新潮社、2006)は某国製とされる超精巧な贋ドル札がモチーフの元NHKワシントン支局長が書いた「わが国初のインテリジェンス小説」(笑)。まあ贋札小説というよりエスピオナージュ、謀略小説です。対して元外務省北東アジア課北朝鮮班長が著した『北朝鮮vs.アメリカ』(原田武夫、ちくま新書、2008)なんてのもあって、そこにはさらなる国際謀略説が・・・。なかなかこの世界は筆者にはややこしくて手に負えません。

06贋札の世界史を遡れば話はおのずとヨーロッパの錬金術に行きつくわけですが、この話題では当然種村季弘の登場です。『詐欺師の楽園』(學藝書林、1975)、『山師カリオストロの大冒険』(中央公論社、1978)、『ぺてん師列伝』(青土社、1982)など、詐欺・贋物エピソードのオンパレードです。書影は岩波現代文庫版ですが、種村季弘と岩波は合わないですね。

07最後は、誰もが知ってる贋札映画の雄、みんな大好き『ルパン三世 カリオストロの城』(1979)です。錬金術師カリオストロの名がルブランの『カリオストロ公爵夫人』を経てこの作品で現代の日本人に深く浸透した、という意味で重要な作品ですが、贋札映画としての瑕疵は「なぜ何百年も摘発されない優秀な贋札製造技術を持ちながら、伯爵は更に財宝を欲しがるのか」「冒頭でルパンは贋札を捨てるのに、ラストでなぜその原版を欲しがるのか」がそれぞれ不明な点です。

それでは次回は企画室の川崎さんにお願いしましょう。

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